本で感じるイタリア #1 風の丘

風の丘

読み応えのある本に出会った。
次が知りたくて眠い目をこすりながらもページをめくってしまう。
時間があれば本を開いてしまう、そんな本だった。

普段、本を並行読みすることが多いのだが疫禍の中、家にいる時間が増えた割には集中力を欠いていて、一冊の本すら開く気力がなかった。

以前、ジャケ買いならぬタイトル買いをした「ふたつの海のあいだで」でカルミネ・アバーテを知り、それは南イタリアを舞台にした映画にもありがちな終わった後にどうしようもなく救われない気持ちになってしまうタイプの物語。

その本がアバーテの作品との出会いであった。
籠り期間中に日本語訳で新刊として紹介された別の物語は初めて読んだ重い物語とは異なり、ページをめくる度に食べたことのないおいしい食べ物が登場し、重くない気分で読み終えることができた。

ちょうど出会いから2作品目を読み終えたときにイタリア文化会館のイベントでオンラインでカルミネ・アバーテがイタリアから参加しこちらもオンラインでシンポジウムに参加して、本からではない人柄を知り、完全に一ファンになった。

そして、作品の年代をさかのぼり「風の丘」を読んだ。
それが初めに書いた読み応えのある本、である。

伏線がはっきりしているので、もしやといろいろ想像しながら読み進めていき、自分の描いた筋との答え合わせがしたくて次々とページをめくってしまう。

この3作においてカルミネ・アバーテの世界に引き込まれていったのは翻訳者に寄るところが大きいのではないかと思っている。

アントニオ・タブッキが好きであるが、多くを翻訳した須賀敦子の文章のおかげのように。

いつかこの翻訳者もかつての須賀敦子のように物を書かれるのであろうか。

日本語訳されたアバーテの書籍は「風の丘」が書かれた時代をさかのぼって2冊ある。

まだ読んでいないが手元にはある。
翻訳者が異なるとまたイメージがことなるのであろうか。
その辺も併せて本を開くのが楽しみである。

そうなると本人の言葉にも触れてみたいのでデビュー作と新作をAmazon.it で購入してみようと思う。

が、到着までやきもきすること間違いなし。

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